研究概要 |
昨年度に報告した,パイレックスガラス製ボールミルはいよいよ実用に供することができるようになった. ボールミルによって粉砕された岩塩に,開放された流体包有物中の水が吸着されるが,粉砕中に液体窒素で冷却したコールドフィンガーに大部分の水を回収する場合と,吸着するにまかせた2通りの実験を同一試料について行なうことによって,流体包有物中の水の真のD/H比および^<18>O/^<16>O比を求めることが可能となった. この方法をとらないかぎり,吸着のさいの水の同位体比の分別の評価は不可能である. 本研究で開発された新方法によってのみ岩塩中の流体包有物の水の同位体比が正しく測定できる点を強調したい. 一方,新たな問題も発生した. 海成の岩塩の場合,流体包有物の溶液はMGおよびCaを多量に含むことがある. 真空中で試料を粉砕して,水を蒸発させるときに,MgやCaの含水塩が形成され,これら含水塩は結晶水を完全には放出しない. そのため,水の同位体比測定に誤差を生ずる. この誤差を除くためには,流体包有物中の溶液の化学組成の分析が必須となる. 現在分析法を開発中である. 陸成の岩塩である,米国カリフォルニア州のSearles湖の試料の流体包有物の水の同位体比分析が完了した. Searles湖における塩水の蒸発条件を詳細に検討することによって,同地方の過去300万年の気候条件の変動を推定した. 海成の岩塩(例えばイスラウル,死海南端のMt.Sedomの岩塩試料)につていは^<87>Sr/^<86>Srの測定を通じて,岩塩の再結晶のさいにどの程度の陸水が混入するかについての知見が得られつつある. また塩水中にとけている古大気の分析も開始した.
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