研究概要 |
溶液(拡散係数【10^5】【cm^2】【s^(-1)】,粘性係数1cp前後。)内化学交換反応は、イオン自身の揺動運動、配位子置換、重合一解離に伴う化学環境の変化に起因する。エネルギー緩和と位相緩和の各ブロッホ方程式にもとづいて、化学交換反応を伴う溶液に対し、観測された縦磁化回復の経時変化とNMRスペクトルの理論的評価をすることによって当反応の動的・静的性質を明らかにする。同位体置換法による中性子回折から局所構造・立体構造を決定する。分子内構造・分子間配列状態と化学反応機構との相関を検討する。実験・理論両面からの当研究は、無機錯体溶液の比較的単純な系から生物無機系へと応用.展開される。溶液中の化学交換過程には、(a)拡散過程・(b)配位子交換過程・(c)互変異重合体過程・(d)互変異性体過程・(e)結合一解離過程がある。(b)の化学交換反応を示す系として硫酸アルミニウム水溶液を選び、アコ錯体の配位水とS【O(^(2-)_4)】との間での置換反応の動的・静的性質及びエネルギー緩和の化学交換効 【〔Al(H_2】O【)_6〕^(3+)】+S【O(^(2-)_4)】【→!←】【〔Al(H_2O)_5SO_4〕^+】+【H_2】O (1) 果を決定・究明した。(C)の化学交換反応として、溶融クロロアルミナート内(多種多様な機能を示す溶液として注目されている。)で起っている化学平衡 2Al【CL(_4^-)】【→!←】A【l_2】C【l(^-_7)】+C【l^-】 (2) に着目して同様な研究を行った。(e)の化学交換反応として、生体系濃度で高エネルギーリン酸化合物ATPとマグネシウムイオン共存系中で成立している ATP+$$〔Mg(H_2O)_b〕^(2+)$$$$→!←ATP$$Mg^(2+)$$$$(H_2O)_n$$+(6-n)$$H_2$$O (3) をとりあげた。前者の2つの系に対しては、【^(27)Al】核に注目し、最後の系に対しては【^(31)P】及び【^(25)Mg】核に注目した。(1)と(2)式に対しては、各サイトの寿命(交換速度の逆数)と分率、及び各々の温度依存性から(1)及び(2)の反応の動力学的パラメータと熱力学的諸関数を決定した。
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