研究概要 |
オルソ位を保護した二種のポルフィリン,メソ-テトラキス(26-ジフルオロフェニル)ポルフィリンとメソ-テトラキス(2-ニトロ-35-ジ-t-ブチルフェニル)ポルフィリンを合成し、鉄・マンガン錯体へ誘導した。 これらの錯体を触媒に用い、次亜塩素酸を酸素源として、オレフィン(スチレン,シクロオクテン)のエポキシ化を行った。 従来次亜塩素酸を酸素源とする反応系では、Mi塩のみが触媒として有効といわれ、鉄塩の触媒活性は極端に低いと信じられていた。 そこで、最初に上記二種のMnポルフィリンの触媒能を調べたところ従来のMnTPPClよりも、耐久性,エポキシ化収率共にはるかにすぐれていることが判明した。 これらの結果から考えて上記二種のポルフィリンを用いれば鉄錯体でも有効な触媒になるかもしれないという期待から、鉄塩を用いてエポキシ化反応を行った。事実、これらポルフィリンの鉄錯体は、従来しばしば用いられてきたMnTPPClよりも良好なエポキシ化収率を与え、特にシクロアルケンのエポキシ化には、Mn触媒系よりもはるかに有効であった。 鉄ポルフィリンー次亜塩素酸系でのエポキシ化反応は、酵素反応によく見受けられる基質(オレフィン)飽和反応特性を有し、良好なP-450モデルとなった。 またメソ-テトラキス(2-ニトロ-35-ジ-t-ブチルフェニル)ポルフィリンの四種の異性体のうち、【α^4】型のマンガン塩は、スチレンのエポキシ化に際し、塩基との組合せより、非対称ポルフィリン両面のうち、開口面の方で反応し、活性点選択性の高い反応を行うことが判明した。 以上総括すると、今年度は形態選択性発現の基本といえる反応面選択性の発見、触媒反応の基本ともいえる触媒耐久性の向上を実現し、Feポルフィリンー次亜塩素酸系からなる酵素類似機能をもつ新反応システムを構築できた。
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