計画調書に記した計画は次の三項目である。(1)含銅配位高分子ゾルの水素吸収(半定量)、(2)上記中間体を触媒として、【Cr_2】【O(^(2-)_7)】の還元反応を追跡(定性)、(3)ジチオオキサミドと銅との配位高分子のNNビス(ヒドロオキシエチル)置換体の固体粉末の【H_2】吸着の定量的測定、であった。 (1)および(2)項は、10気圧まで耐えられるガラス容器中で観測した。吸収に引続き二価の銅が一価を経て零価の銅、すなわち金属銅まで環元されることがみとめられ、【Cr_2】【O(^(2-)_7)】のような酸化剤が共存している場合には、まずその酸化剤が還元され、その際銅のヒドリド錯体と思はれる中間体が触媒としての機能をはたして居るように解される。酸化剤がすべて還元され(今の場合は、クロムがすべて【Cr^(3+)】n変化し終える)ると、銅が金属銅に還元されはじめる。以上の反応機構を充分の精度で定量的に証明するには、水素圧が低く、結果として反応の進行が遅く、副反応などのため、速度解析にたえるデーターが得られなかった。次年度に予定して居る反応容器(金属製)でよりよいデーターが得られるものと期待している。本年度の経験から実験条件や分析方法などについての準備は整ったと考えている。 上記計画(3)は水溶液でも、コロイドでもない、固体の粉末に【H_2】を収着させようとゆうものである。水素吸藏合金との関連でも意味があると思はれる。 1気圧以下の水素収着については分担者(金崎)が日本化学会秋期年会で講演発表し、1気圧以上については代表者(神田)が錯塩化学討論会で口頭発表した。後者については、広く銅(11)単塩についても検討し、銅ヒドリド結合が生成して居るらしいことを確かめた。たゞし水素圧の変化で反応の進行を読みとるには圧変化が小さすぎ正確な解析が出来難い。次年度の差圧計購入は、その問題を解決するためのものである。
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