研究概要 |
非等価な配位構造をもつ,二種の異なる金属イオンがイミダゾレートで架橋した二核構造は生体内に存在する金属酵素の活性部位の構成要素とされている. この特異な構造をモデル錯体で実験するための分子設計と合成法を開発すると共に,錯体の構造と磁気的性質について研究した. イミダゾレート架橋の等核および異核錯体の合成のための鍵化合物として,アセチルアセトン,エチレンジアミンおよび4ーフォルミルイミダゾールの1:1:1縮合物であり,イミダゾール部分を含む非対〓四座シッフ塩基からなる銅(II)錯体[Cu(HA^-)](CLO_4)を合成した. この銅錯体のイミダゾール部を脱プロトン化したのち,種々の四座配位金属錯体と反応させることにより二核錯体を合成した. 錯体の元素分析,電導度測定,赤外およびUVスペクトルの測定により組成,純度,結合状態および電子状態についての知見を得た. 磁化率の測定はファラデイ法とSQUIDを併用して10ー300Kの温度領域で行ない,二核錯体の磁化率のモデルに基づいて解析を行ない,非線形最小二乗法により最適化パラメーターを計算した. 二核錯体の二種の金属イオン間にはイミダゾレート基を介した反強磁性相互作用があり,その大きさを示す相互作用定数は次のように計算された. 1.[Cu(A)Cu^<II>(NTBet)]^<2+>,(NTBet)=tris[(lーethylー1Hーbenzimidazol-2-yl)-methyl]amine;2J=-140cm^<-1>.2.[Cu(A)Cu^<II>(tfacac)_2]^<2+>,(tfacac)=trifluoroacetylacetonate);2J=-112cm^<-1>.3.[Cu(A)Cu^<II>[12]aneN.ナ_<4.ニ>]^<2+>;2J=-19cm^<-1>.4.[Cu(A)Fe^<III>(L)]^+,(L=[Disー[3ー(3ーmethoxysalicylideneamine)propyl]ーaminoーO,N,N′,N′,O′]);2J=-32cm^<-1>.(5)[Cu(A)Mn^<III>(L)]^+;2J=-32cm^<-1>.以上の結果はBenchiniによる構造パラメーター,α_1,α_2と2J値間の関係を十分満足しない. 配位構造の異なる二核錯体についての構造パラメーターの設定が必要であると考えられる.
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