電池は電気エネルギーの塊であり、鉛蓄電池がフランスのプランテにより1859年に発明されて以来、130年の歴史が有るが、この間、性能の改善、新型電池の開発が進められ、目ざましい進歩を遂げて来た。しかしエネルギーの問題は人類社会において永遠のテーマで有り、現在でも新蓄電池の開発が切望され、各国で基礎および応用研究が盛んに行われている。本研究ではこの新型蓄電池の一つとして、高い起電力およびエネルギー密度をもつNaIS(IV)溶融塩電池の特性について検討を行った。 セルの組立ては昨年度と同様にパイレックスガラスで作製した。セルの特性を支配する固体電解質は米国Cerametec社製のものを使用した。セルの構成はB″-アルミナ固体電解質チューブの外側に金属ナトリウム、内側に支持塩であるNaCL-AICL_3混合塩と元素状Sを装入し、陽極、陰極の電極にはタングステン線を用いた。測定は作成したセルを充・放電装置に連結し、本年度は170℃の温度で充・放電を行い、その起電力を連続的に記録した。 本年度作成したパイレッスクセルはセル自体の内部抵抗が昨年のものと比べて大きく、セル性能は良くなかった。これはB″-アルミナ固体電解質チューブの特性によるとも考えられるが、その他の原因としてセル作製時における金属Naの酸化、NaCl-AICl_3混合塩の不純物混入による電導度の低下、固定電解質チューブとパイレックスガラス接合の不備などが挙げられる。しかし本年度は2つのNaIS(IV)溶解塩電池セルを作製し、その特性について検討した結果、次の事項が明確となった。(1)電池の放電過程では起電力が一定となる2つの平坦部が認められ、第一の領域では3.5V以上の高い起電力を得た。(2)電池の性能を示すエネルギー効率、エネルギー密度およびイオウの利用率は電流密度およびB″-アルミナ固体電解質セパレータの性質に依存することが認められた。
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