研究概要 |
硫酸は非鉄金属製錬から生産される安価な酸である. この硫酸を用いて得られる金属硫酸塩水溶液中では金属イオンと硫酸イオンがイオン対錯体を作るため,金属硫酸塩水溶液中の化学反応を考える場合には,この錯体形成を考慮しなければならない. しかしこれに関する熱力学的数値は十分とはいえず,濃厚溶液や高温におけるデータは全くない. そのため 1)紫外部吸収スペクトルの測定,2)金属硫酸塩共存下における硫酸カルシウムの溶解度の測定,3)金属硫酸塩の溶解度の測定 によって熱力学的数値を求めることとした. 1)紫外部吸収スペクトルの測定: 過塩素酸銅溶液に種々の割合で硫酸ソーダを加え,150℃まで紫外部収吸スペクトルを測定することによって種々のイオン強度における硫酸塩錯体の解離定数を求めた. その結果,イオン強度が小さい領域ではイオン強度の平方根と解離定数の対数(直との間に直線関係が得られることから,イオン強度0における熱力学的解離定数を得た. 2)硫酸カルシウムの溶解度に及ぼす共存金属硫酸塩の影響: 硫酸亜鉛,硫酸銅,硫酸マネグシウム,硫酸コバルトが共存したときの硫酸カルシウムの溶解度を決定した. またこれらの硫酸塩と硫酸が共存する場合についても測定した. その結果,金属硫酸塩濃度,硫酸濃度が増すと,硫酸カルシウムの溶解度は低下することを見出した. 現在100℃以上における硫酸カルシウムの溶解度決定のためオートクレーブを改造し,測定を開始している. 3)金属硫酸塩の溶解度の測定: 硫酸第一鉄の溶解度を200℃まで測定し,金属硫酸塩(硫酸亜鉛,硫酸マグネシウム,硫酸)の共存した場合について測定した. 硫酸第一鉄の溶解度は硫酸塩濃度が下がるにつれて低下するが,硫酸濃度が高くなると,上昇することが判明した.
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