研究概要 |
本研究では, MOSIC材料を含む電子材料の作製プロセスに着目して, そこで生じている化学反応と拡散現象について調べた. 研究内容は, 大別して, (1)Siの熱酸化の速度論的研究, (2)スパッタSiO_2膜の特性の評価, (3)真空蒸着法における蒸発蒸着過程の機構の研究および(4)二元系酸化物のエレクトロクロミズム現象の研究の4点になる. 以下にそれらの概要を延べる. (1)Siの熱酸化の速度論的研究 本研究では, O_2とCO_2による熱酸化の実験を行った. CO_2による酸化速度はO_2による速度よりも非常に遅く, 薄い酸化膜の作製が容易であることが分かった. また, これらの反応は, 酸化膜中の酸化種の拡散で律速されており, 拡散種は各々, O_2およびCO_2ガス分子であると推定した. (2)スパッタSiO_2膜の特性の評価 まず, スパッタ時間とSiO_2膜厚の関係を調べた. スパッタによる成膜速度は, 真空蒸着法とは異なり, 初期段階から一定であることが分かった. 次いで屈折率の測定と酸素の拡散系数の推定を行った. 屈折率は1.45-1.47, 拡散系数は2.8×10-4exp(-27010/RT)cm^2/sとなり, 熱酸化膜の値とほぼ等しかった. (3)真空蒸着法における蒸発蒸着過程の機構 Li_2O-B_2O_3二元系酸化物を用いて, 蒸発速度, 蒸着速度, 蒸着膜の状態と蒸発源温度や基板温度との関係について調べた. また, この場合の蒸発分子はLiBO_2であることを熱力学と気体分子運動論より推定した. (4)二元系酸化物のエレクトロクロミズム エレクトロクロミズム(EC)は, 従来, WO_3やM_0O_3などの単体の酸化物で見出されていたが, 今回La_2O-WO_3二元系酸化物においてもその現象が発現することを見出した. その発現メカニズムと作製したECセルの詳細な特性については, 現在研究中である.
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