研究概要 |
1.超高真空反射電子回折装置の組立および調整ー既存のUHVチャンバの一部を改造し、反射電子回折装置を取り付けた。さらに、マスフィルタ型ガス分析計とオージエ電子分光分析(AES)用CMA型分光器を組み込み総合調整を行い、ガス出しベーキングの後、到達真空〜【10^(-9)】Torrがえられた。 2.表層構造の解析ーMgを含むAL合金の表層酸化物の構造について、加熱の温度と時間、酸素ポテンシャルの影響および非晶質初期酸化層の役割について調査した。試料としてAL-Mg系(5052)、AL-Mg-Si系(6063)、AL-2.6at%Mg2元系合金を用い、初期表面は電解研摩で調整した。薄膜酸化層の結晶構造と結晶状態は反射と透過電子線回折および高分解能電子顕微鏡観察を併用して評価し、組成調査はAESにより行った。真空中(<【10^(-7)】Torr)および酸素中(酸素分圧【10^(-3)】〜10Torr)加熱(150〜500℃)に伴う酸化層の構造と組成の変化およびMgO形成挙動について以下の結果がえられた。(1)真空中低温加熱(150℃,32h)で最外層にMgOの形成が見出された(6063)。MgOが最外層に形成される時間は合金中のMg濃度の増加に伴い短縮する。(2)MgOの低温形成に際して、酸化層にMgが存在することがAESで確かめられているにもかかわらず、スピネル構造の形成が動径分布関数解析で確認されないことから、MgOの形成は多孔性の非晶質酸化膜中をMgが気相で拡散・透過して進行すると結論した。(3)高温では、形成するMgOが、室温初期形成のアルミニウム酸化物と固相反応をしてスピネル型のMg【AL_2】【O_4】をつくる。この固相反応の開始は高温になる程早い。 3.光照射効果の調査ー超高真空領域で放出される水素が、表層部からだけでなく、内部からも拡散・透過して放出されるのか否かを確かめる実験の準備とともに、ステンレス鋼について直接、照射効果を調査して、照射に伴う表層部の変化を見出した。
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