研究概要 |
塗装鋼板の劣化過程の新しい追跡評価方法として、レーザーを光源とする光音響分光法(PAS)法による塗膜剥離・ふくれ発生位置の2次元的検出および塗膜劣化の極く初期における金属/塗膜界面の剥離音をアコーステック・エミッション(AE)法による検出を試み、劣化の評価方法を確立することを目的としている。 本年度のPAS法による研究では、アルゴン・ガス・レーザを光源として精密な試料面走査装置,光音響検出装置およびこれらの制御・計測用コンピュータシステムを試作し、その性能を調べた。次にシステムを用いて、エポキシ樹脂系、アクリル系塗料による塗装鋼板の剥離部の検出を行った。その結果、乾湿繰返しにより塗膜/金属界面に空隙を生じた試料では高感度で劣化位置を検出できること、さらにレーザ光の断続周波数を高める程、感度および位置(ひろがり)の検出精度が高まることがわかった。(電気化学協会54回大会発表) AEによる剥離音の検出については、予備実験においてエポキシ系塗膜において確認されていたが、本年度の研究により塗膜の剥離音と水素気泡の発生音とはAE波形およびエネルギーが異ること-塗装の状態(塗布法・乾燥法・剥離速度)によっても異るパターンの信号が得られることが確認された。(AE国際会議、腐食防食討論会発表) 以上、本年度の研究目標の多くが達成されたが、PAS法においては光音響検出法の改良、低出力レーザによっても検出可能にすること、計測時間の短縮などの問題点を、AE法においては剥離音に特徴的な信号を抽出することなどの問題点について、来年度の研究を行う。
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