研究概要 |
本研究は地球化学的にも興味深い高圧力下でベリル単結晶の水熱育成を試み, 比重, 屈折率, 光学的特性などにおいて天然に産するものに近い結晶を得ることを目的とした. 高圧力下で水熱育成は従来のオートクレーブでは不可能であるので, ピストンシリンダー型高圧力発生装置による固体圧を利用した. また, この方法は大型の単結晶を得ることは困難であるので, 気体圧縮による内熱式高圧装置を試作して大型のベリル単結晶育成を試みた. 天然のエメラルドはC軸方向に伸びたchnnelを持ち, この中に水, CO_2, アルカリイオンなどを取り込んでいる. とくに, アルカリイオンは従来の水熱法では認められないが, 本研究では赤外吸収スペクトルによってその存在が明瞭に確認できた. また, これらchannel中にふくまれるアルカリイオンの量を分析した. 0.1Nおよび0.3N NaOHから成長した結晶中にNa+イオンは0.1Nでは0.2wt%, 0.3Nでは0.7wt%含まれていた. この結果は赤外吸収スペクトルの結果と良く対応しており, 天然産のものに非常に近いものであることを示している. さらに, channel中のアルカリイオンの含有はこれらの屈折率にも微妙に反映するとされている. すなわち, アルカリイオンの含有によってフラックス法→水熱法→天然の準に屈折率の値は高くなっている. 本研究で得られたベリル単結晶の屈折率の値はω=1.5880, ε=1.5790となり, この値はフラックス法のものより大きいことはもちろんのこと従来の水熱法から得られたものよりさらに高く, 天然産のものの中でもかなり大きい順に属し, 合成ベリルとしては最高の値であった. これはchannel中にtypelおよびtypellの水と共にアルカリイオンを含むことによるものである. このように, 高圧水熱育成ベリルは, その格子定数, 赤外吸収スペクトル, および屈折率等を比較すると天然産のものと全く区別することがてきないものであることが明きらかとなった.
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