研究概要 |
ゾル・ゲル法に基づく浸漬法によりネサガラス基板上にTi【O_2】薄膜をコーティングする技術を確立した。膜厚と光電流の関係を調べたところ、約1.8μmで最大の光電流を与えることが見い出された。これは、膜厚が厚過ぎると膜の抵抗が大きくなるためと説明された。次に膜に500〜900℃で再加熱処理を施したところ、いずれの温度でもある特定の時間で光電流が著しく向上することを見い出した。この理由として、(1)未分解有機物残渣によって【Ti^(4+)】→【Ti^(3+)】の還元が起こり、半導体の電導度が増加すると同時に電気化学的活性点が増える、(2)結晶性の向上などが考えられた。次にTi【O_2】薄膜電極上での水の光電気分解(酸素発生)の機構の詳細な解明を試みた。その結果、酸素発生には2つの経路があり、pHによりそれらの比重は異なることを見い出した。第1の経路は酸性側で優先的である、【Ti^(3+)】に吸着した水のホールによる直接酸化であり、第2の経路は、やはり【Ti^(3+)】に吸着したO【H^-】イオンのホールによ・OHラジカルへの酸化である。第2の酸化反応の主生成物は【H_2】【O_2】であるが、第1の酸化反応でも副反応として【H_2】【O_2】が生成することが確認された。また、半導体-電解液界面のインピーダンス解析を行い、表面準位の存在の確認およびその電極反応機構に及ぼす影響を明らかにした。その結果、表面準位には、ホールをトラップしてフラットバンド電位をシフトさせるだけのものと、直接水の電気分解に関与する2種類のものがあることが明らかとなった。その他、【Sb^(3+)】をドーピングしたTi【O_2】の光電気化学的挙動、Ti【O_2】薄膜を更にTi【O_2】-Si【O_2】,Ti【O_2】-Zn【O_2】,Ti【O_2】-【Al_2】【O_3】系でコーティングしてPZZPを変化させた場合の光電気化学的挙動、BaTi【O_3】,SrTi【O_3】,ZnTi【O_3】薄膜の調製とその光電気化学的挙動などについても研究を行ない、興味ある結果を得た。
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