研究概要 |
第2世代燃料電池と電解質,石炭ガス脱硫プロセスの反応媒体,蓄熱用媒体などとして重要性を増しているアルカリ金属炭酸塩について、従来不足していた熱力学的性質や反応(腐食)性に関する基礎データを整備,充実化することが本研究の目的である。本年度は、電気化学手法による熱力学的安定性の測定,及び酸化ニッケルなどのセラミックス材料との反応性,溶解量の測定,の2点に焦点を絞った研究を計画した。以下に主要な成果を述べる。 熱力学的安定性の研究の第一段階として、既に熱力学データが整っている【Li_2】【CO_3】,【Na_2】【CO_3】,【K_2】【CO_3】各塩が単独な場合を取りあげ、種々の熱力学的な条件下での各塩の安定に存在する条件範囲を図示する方法を考案した。縦軸に炭素活量Ac,横軸に酸素分圧P【O_2】を採り、logAc-logP【O_2】図上に各塩の安定存在領域を示した図を用いることで、任意の温度,P【O_2】,Pco,P【CO_2】,P【H_2】/P【H_2】Oに於ける各塩の安定性と、その時のアルカリ金属活量が直ちに読み取れるようになった。次いで固体電解質電池、【M_2】O,【M_2】C【O_3】,C/安定化ジルコニア1Pt,【O_2】(M:Li,Na,K)の起電力測定から混合アルカリ金属炭酸塩の熱力学的安定領域を実測することを試みている。しかし、安定化ジルコニアが炭酸塩により著しい腐食を受ける場合があり、まだ確立したデータを得るに至っていない。 安定化ジルコニアの炭酸塩による腐食は特にCaOで安定化されたものの場合に著しく、固体の炭酸塩と600℃程度で接触させただけで破壊に至る。この原因を究明した結果、セラミックス粒界にアルカリ金属成分が浸入すると伴にジルコニア粒内から粒界へカルシウムが析出する為であると判明した。【Y_2】【O_3】添加の場合、950℃以下ではイットリウム偏析,破壊ともに起こらない。酸化ニッケルの【(Li_(0.68)K_(0.32))_2】【CO_3】への溶解量を測定した結果、650℃,P【CO_2】=1atmで4×【10^(-5)】mol/mol程度溶解すること、溶解量はP【CO_2】に比例し、P【O_2】には依存しないことなどを明らかにした。
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