研究概要 |
1.ベンゼン酸化反応の実用化(井藤担当):これについては、付加価値の高いヒドロキノン(HQ),及びp-ベンゾキノン(BQ)の連続合成法の開発に主眼を置いた。具体例として、原料ベンゼンを循環させながら反応を行い、系内に蓄積する二価銅を電解環元法により連続的に一価銅に戻すプロセスを組んで検討を加えた。本法によれば、30%程度の電流効率は達成でき、連続的にBQが取得できた。又、本法の改良として、Pb【O_2】陽性を用いればベンゼンの陽極酸化も本系に組込むことができ、陰陽両極でそれぞれ独立にBQを生成でき、見掛け上のBQの電流効率は90%にも向上した。 2.速度パラメーターの決定と反応機構の詳細検討(九内担当):本反応系における反応経路を先ず明らかにする事,及び生成物をいかに選択的に制御し得るかという事について検討し、以下の事を明らかにした。(1)低酸素分圧下、pH1.3ではフェノールが主生成物となる。(2)同、pH3ではHQが主生成物となる。(3)高酸素分圧下、pH4ではBQが主生成物となる。本反応のキーポイントは中間種、パーオキシラジカルの効率良い生成とその後続分解反応の制御にある。高酸素分圧はその生成に有利に働き、高pHではHQへの分解が主となる。他方、低pHではフェノールへの分解が優先する。又、pHが4以上になれば、HQはBQへ酸化されるようになる。これらの競争反応は条件のコントロールにより見事に制御でき、本反応系がフェノール類の合成法として有用であることが明らかにできた。 3.同種反応との比較(九内担当):OHラジカルを生成する事が知られている系として水溶液のガンマ線照射法及びFenton反応をとりあげ、銅の関与した系との比較を通じて、本反応系の特異性を明らかにできた。特筆すべき事は、HQ生成には一価銅と酸素の共存が不可欠である事である。
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