研究概要 |
本研究では, 一価銅イオンを電子移動担体として用い酸素を活性化する事により, ベンゼンを直接酸化してフェノール及びヒドロキノンを得る反応系について詳細に検討した. 1.〔反応機構の詳細検討〕 本系はOHラジカルが活性酸素種であると推定されたが詳細は不明であった. 検討の結果, 以下の事が明らかにできた. (1)速度論的解析により, 活性酸素種はOHラジカルと結論できる. (2)本系の失活反応は過酸化水素又はOHラジカルの段階で起る. (3)過酸化水素の生成効率は定量的であり, 又その生成速度は分解速度に比べて二桁程度速いと見積れる. (4)同位体実験の結果は, 初段の中間体はヒドロキシシクロヘキサジエニルラジカル, これに酸素分子が付加したパーオキシ体が第二段目の中間体であるとした, 遂次型の反応機構を支持する. 2.〔同種反応との比較検討〕 フェントン反応及びγ-線照射系を取上げ, 同位体実験などを通じ比較検討したところ, 銅/酸素系の反応はフェントン反応と基本的には同一機構で進むことが明らかになった. 又, 一価銅は還元力が強いため, パーオキシ中間体を容易に還元でき, その結果ヒドロキノンを与え易いなど, 本系の特徴が明確にできた. 3.〔本系の効率向上と実用化への応用〕 本反応経路に影響を及ぼすと思われる種々の因子について検討した結果, pH3以下でフェノールが, pH3以上でヒドロキノンが主成する事が分かった. 又, ヒドロキノン生成には高酸素分圧, 低銅濃度が有利であった. 本系の実用化については, pH3の条件で連続抽出しながら銅イオンを電解還元する系を工夫し, 検討した. この方法で電流効率50%程度でp-ベンゾキノンが連続取得できることが明らかにできた.
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