研究概要 |
1.液晶型クラウンエーテルおよび対アニオン化合物の合成。15および18環のベンゾクラウンエーテルに種々のP-置換ビフェニル基を結合したもの12種を合成して液晶形成能を比較し、パラ位にシアノ基をもつものが良好な性質を示すことが分った。一方、これらの比較的高い液晶形成域(170〜190℃)を下げるため結合鎖を変えるなど試みたが、充分な結果は得られなかったのでモノアザクラウンエーテルと結合したものの合成を行っている。対アニオン化合物として、2,6-位にアルキル基,ニトロ基,ハロゲン基,4-位に長鎖アルキル基をもつフエノール類を合成した。 2.(1)イオン抽出能、輸送能の検討。上記で得た対アニオン化合物と組合せ、アルカリ金属イオンの塩化メチレン相への取込み能と輸送能との関係を比較した結果、2,6-位にあるかさ高い置換基ならびに4-位にある脂溶性のアルキル基が、カチオンの取込みおよび輸送能を著しく増加させること(t-Bu>i-Pr>Me,I>Br>Cl),これら置換フェノール類のpka値の効果は比較的小さいことが明らかになった。設備備品費で購入した分光計を用い、塩化メチレン相中の酸型とアニオン型の存在比、カチオンの取込み放出の速度を比較し、pka値はカチオンの選択性に影響するが、取込み放出の速度は主としてクラウンエーテルの種類によって支配されることを見出した。 (2)液晶性クラウンエーテルの性質。液晶にピクリン酸塩を添加した系の電気的、光学的性状を検討した。塩の添加により誘電率は著しく増加し、また15環をもつものでは液晶域の温度低下、吸収極大の変化が、【Na^+】と【K^+】および【^+N】【Me_4】との間で大きい差異を示すことが分った。結合鎖にエチニル基をもつP-シアノビフェニル-ベンゾクラウンエーテルが強い蛍光を示すこと,アルカリ金属塩の添加による蛍光波長,強度の変化がカチオンの種類により影響をうけることが明らかになった。
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