研究概要 |
1.クラウンエーテル錯体の構造 結晶として得られたビス(モノアザ15クラウン5)K^+錯体のX線結晶構造解析に成功し,1分子内に含まれる2個のK^+が非対称な配位をしたサンドイッチ構造であることを始めて明らかにした. 一方,Nーヘプチルモノアザ18クラウン6の結晶では,環面に垂直に側鎖が配置され,側鎖の3番目の原子が,環のひずみを生ぜずに環中心のカチオンに配位しうつ構造であることが明らかとなり,Nー原子を含むラリアートエーテルのもつ大きな錯生成能が,この種の分子本来の構造的特長によるものであることが分った. 2.液晶クラウンエーテルの挙動 昨年につづき種々のクラウンエーテルを合成して液晶生成能を調べた結果,ベンゾクラウンエーテルを含むものが液晶となり易いことが分った. アセチレン結合鎖をもつビフェンル系液晶クラウンエーテルの蛍光現象を利用し,溶液中,チオシアン酸塩との錯形成による電子移動にもとずく蛍光消光現象が,カチオンの錯生成能とよい相関を示すことを確めた. この結果を基とし,従来全く例のない液晶(固体)状態におけるクラウンエーテルーカチオン系の錯生成定数を求めた. その結果,液晶中においても,溶液中とほぼ同様な錯生成定数を与えることが分った. 3.液膜輸送におけるクラウンエーテル錯体の挙動 従来,クラウンエーテルを用いる液膜輸送では,カチオンを供給および補集する水相についてのみの研究に限られていた. 輸送効率にもっとも影響の大きい有機液相中のクラウンエーテルカチオン錯体およびプロトン錯体について,2,6ー二置換フェノールと組合せ,カチオンの取込み,放出の速度ならびに輸送中の経時変化を調べた結果,放出側界面における拡散および錯体の分解の2つの律速過程が錯生成能のみならず,クラウンエーテルとカチオンの組合せにより種々変化することが明らかになった.
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