研究概要 |
本研究において得られた成果をテーマ毎に述べる。 1.デヒドロオリゴペプチドの不斉水素化 Y-△AA-(SorR)-AA-OH型デヒドロジペプチドの不斉水素化において、分子内にアミノ基を持ち基質のカルボキシル基との静電的相互作用が可能なジホスフィンを配位子とするRh触媒は保護基Y(Y=ZorAc)の種類によらず効率よい1,4-不斉誘導により90%以上の高い不斉収率を与えた。脱保護の容易なZ基を持つ基質について条件を検討し基質の取り込みおよび不斉誘導に対し静電的相互作用が重要な役割を果たす事を明らかにした。配位子の修飾を行ない、リン上フェニル基へ電子供与性基を導入した配位子および分子内の立体反撥により配位子内のアミノ基が基質カルボキシル基の方と向きやすい様にした配位子を合成した。次年度これらの配位子を用いてさらにデヒドロジペプチド及びトリペプチドの反応を行なう。 2.環状アリル化合物の不斉アルキル化 Rd-ジホスフィナイト系による本反応において、配位子の2ケのジホスフィノキシ基の非対称化(【(4-CH_3OC_6H_4)_2】PO-基と【Ph_2】PO-基)によりシクロヘキセニルアセテートの反応でエナンチオ場選択性を向上させる事、より環の小さいシクロペンテニルアセテート系ではホスフィノキシ基とホスファミド基を持つ非対称配位子が有効である事が判った。リンについたフェニル基のm-位にメトキシル基を導入すると配位子の立体規制が強まりエナンチオ場選択性が大きく向上する事を明らかにした。 3.イミンへの不斉求核付加種々のCo-アミノ酸錯体から効率良くキラルなイミノカルボン酸錯体を得る方法としてβ-脱離及び脱水素を検討した。β-ハロアミノ酸又はβ-ヒドロキシアミノ酸錯体からほぼ定量的にイミノカルボン酸錯体をβ-脱離による得る条件を見出した。X線構造解析によってイミノカルボン酸錯体の構造を明らかにし、次年度行われる求核付加のための重要な知見を得た。
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