研究概要 |
ビタミンB2は天然に存在する不斉配位子をもつCo錯体であるがこれを不斉融媒として有機合成に応用することを検討し, 以下の成果を得た. 1.Znにより還元したCo(I)錯体は電子吸引性の置換基を有するシクロプロパン類と反応し環の開裂を伴いCo-C結合を有する生成物を与える. 2.Coに結合したアルキル基がキラルまたはプロキラルである場合それらのHNMRシグナルはビタミンB12の不斉空間において識別される. 3.プロキラルなシクロプロパンとB12-Co(I)の反応においてはCo-C生成物の生成に際して不斉誘導が起こる. 不斉選択性は〜0%(置換基がエステル基とアセチル基)から〜30%(置換基がエステル基とアルチル基)の範囲でる. 4.シクロプロパン環の開裂反応においてはCo(I)のC2-位への攻撃とG-位のプロトン化は協奏的に起こり, 不斉誘導はCo(I)の基質に対するアプローチのコントロールで決まる. 5.上述のCo-C生成物は水-イソプロバノール中で可視光照射によりホモリティックな開裂をうけ, 生じたアルキルラジカルはイソプロバノールより水素を引きぬき還元体を与える. 6.5の反応を更に還元剤であるZnの存在下で行えばシクロプロパン誘導体の光化学的触媒的還元反応が達成される. 2の時例えばノーフェニルー1-シクロプロパンカルボン酸エステルを基質に用いるとかなりの不斉還元が起こる. 7.上の反応でマイケルオレフィンを共存させると, 光開裂により生成したアルキルラジカルがラジカル機構によりマイケル付加をおこし次いでイソプロバノールからの水素移動により, マイケルオレフィンのC-3ホモロゲーションが達成される. この場合水素原子供与体としてのイソプロバノールの存在は必須である.
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