研究概要 |
糖誘導体を含むポリオールには重要な生理活性を有するものが多く、これら化合物の合成を高度に立体選択的に行う新しい手法の開発が求められている。本研究はケイ素官能基変換法を利用して立体選択的なポリオール類の合成法を検討してきた。下記の成果を得た。 1.アミノアリルシランの選択的γ-位炭素-炭素結合の生成 ケイ素上にアミノ基を有する(ジエチルアミノ)ジメチルアリルシランを当量のテトラメチルエチレンジアミンの存在下、n-ブチルリチウムを作用させて、アリルアニオンとした後、シアン銅(【I】)を添加してアルデヒドを反応させると非常に高い選択性でγ-付加物を与えることを見出した。生成するビニルシランをエポキシ化し、引き続いてケイ素官能基を酸化的にヒドロキシ基に変換すると一挙に2,3-ジヒドロキシフラン骨格が生成した。この反応に基づいて2-デオキシC-ヌクレオシド誘導体の合成に成功した。 2.アミノアリルシランの選択的α-位炭素-炭素結合の生成 (ジエチルアミノ)ジメチルアリルシランとn-ブチルリチウムの反応で生成するアリルアニオンに塩化亜鉛を添加すると反応は一変した。すなわち、アルデヒドとの反応では選択的にα-付加体が生成し、ケイ素官能基を酸化的にヒドロキシ基に変換すると立体選択的にエリスロ体1,2-ジオールが得られた。一方このアリルアニオンとヨウ化アルキルでカップリング反応させるとγ-位置選択的に進行し、トランス-ビニルシランを得た。これをエポキシ化と引続きグリニャール試薬と反応させることによりスレオ体1,2-ジオール合成ルートを拓いた。 次年度は官能性ケイ素を有するγ-シリルアリルシランについてもメタレーション反応を検討し、これに基づいた生理活性ポリオール類の合成を行う。
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