研究課題/領域番号 |
61470099
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
井上 義夫 東京工大, 工学部, 助教授 (60016649)
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研究分担者 |
桜井 実 東京工業大学, 工学部, 助手 (50162342)
中條 利一郎 東京工業大学, 工学部, 教授 (60016285)
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キーワード | 高分子圧電体 / 非晶性高分子 / シアン化ビニリデン / 酢酸ビニル / 共重合体 / 高分子のコンフォメーション / 高分子のNMR |
研究概要 |
シアン化ビニリデン系の共重合体のあるものは非晶状態にもかかわらず高い圧電性を示す理由を分子、原子のレベルから検討し、より優れた高分子圧電体を開発するための基礎的知見を得ることがこの研究の目的である。まず高い圧電性を示すシアン化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体〔P(VDCN/VAc)〕と、これとよく似た化学構造を持つにもかかわらず小さな圧電性しか示さないシアン化ビニリデン/メタクリル酸メチル共重合体〔P(VDCN/MMA)〕の微細構造を125MHz【^(13)C】-NMRスペクトルより解析した。両共重合体ともに、VDCN単位とVAcまたはMMA単位が頭-尾結合により交互に連結した交互共重合体であり、またVAcまたはMMA単位の立体規則性に関してはアタクチック構造であった。すなわち、両共重合体の微細構造の特徴はほとんど同じであり、微細構造が両者の圧電性の違いの原因ではないことがわかった。P(VDCN/VAc)の溶液中の500MHz【^1H】-NMRスペクトルを測定し、スピン解析した結果、コンホメーションは溶媒に強く依存することを見いだした。この溶媒依存性は、相当する溶液からキャストして得たフィルムの圧電性およびエンタルピー緩和量(本補助金により購入した示差走査熱量計を使用して測定)のキャスト溶媒依存性とよく対応していた。 以上の結果は、P(VDCN/VAc)の圧電性の大小が極性基であるシアノ基の空間的な配向と分子鎖の充填状態に依存することを示し、これらは溶媒によりある程度制御できることがわかった。P(VDCN/MMA)とコンホメーションは実験的に決定できなかったので理論的に解析中。P(VDCN/VAc)とP(VDCN/MMA)の固体高分解能【^(13)C】-NMRより両者の分子運動性には差があることを認めた。分子運動性と圧電性の解明は次年度の課題である。
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