1 本研究は、ゴカイのクチクラコラーゲンを用い、広い濃度領域にわたる流動特性と熱力学的特性から、半屈曲性高分子の準希薄濃度域の物性に関する知見を得ると共に、熱変性に伴うクチクラコラーゲンの分子形状の変化を、溶液物性と熱特性の上から比較検討することを目的としている。 2 このため、分子量160万のクチクラコラーゲンと分子量30万のカーフスキンコラーゲンとを用い、希薄濃度領域ら準希薄領域への転移域付近における流動特性の詳細な検討と、熱変性機構の検討に重点を置いた。 3 本研究中に於て得られた成果の概要は次の通りである。 (1)動的粘性率、沈降速度の測定によれば、クチクラコラーゲン及びトロポコラーゲンは、両者共0.12g/dl付近にその臨界域の存在することを確めた。(熱力学的測定では0.16g/dl)かつ、流体力学的物性の臨界域における変化は、熱力学的物性の変化よりも緩やかである。 (2)熱変性によるクチクラコラーゲンのゼラチン転移を、光散乱、及び沈降平衡の測定から、分子量約50万のコイル状分子3ケへ解離であり、その変化も転移とするよりは、トロポコラーゲンより緩やかな階段的なものである。 (3)測定から得られた濃度の転移域は、希薄域から準希薄域への転移する領域とするよりは、むしろ準希薄域から濃厚域へ転移する領域とする方が妥当であることを結論づけた。
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