研究概要 |
セルロースと種々の塩化置換ベンゾイルおよび置換フェニルイソシアナートを反応させ、相当するセルローストリベンゾエートとフェニルカルバメート誘導体を合成した。各誘導体を元素分析,分光学的手法で調べた結果、いずれも三置換体であることが明らかとなった。これらの誘導体をシリカゲルに吸着させ、高速液体クロマト用の充填剤を調製し、種々のラセミ体に対する光学分割能を評価した。ベンゾエート,カルバメートいずれについても、その光学分割能は置換基の種類に大きく依存した。ベンゾエートについては、置換基としてメトキシ,メチル,クロロ基等を導入したが、全般に電子吸引性の置換基より供与性のメチル基の方が、高い光学分割能を有する充填剤を与えた。特に、3位にメチル基を持つ誘導体は、広範囲のラセミ体の分割に有用であることが明らかとなった。しかし、2位に置換基を導入した誘導体は極めて低い分割能しか示さなかった。置換フェニルカルバメート誘導体については、20種類の誘導体の分割能を系統的に調べた。9種類のパラ置換体のうちでは、メチル,エチル基のような電子供性の置換基あるいはクロロ,トリフルオロメチル基のような電子吸引性の置換基を有するもののいずれかが無置換のものより、より高い高学分割能を示すことが明らかとなった。しかし、メトキシやニトロ基のようなヘテロ元素を含む置換基は好ましくなかった。これらの結果をもとに、3.5-ジメチルおよび3.5-ジクロロ置換体を調製したが、これらは極めて優れた光学分割能を有していた。特に、前者は耐久性もよく、実用性の高い充填剤となり、アトロピン,β-ブロッカーなどの医薬品に対しても良好な分割能を示した。これらのセルローストリスフェニルカルバメート誘導体のうち、高い光学分割能を示すものは、いずれも液晶形成能を有し、シリカゲル上では規則的な構造をとっていることが明らかになった。
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