研究概要 |
セルロースおよびアミロースのトリス(3,5ージメチルフェニルカルバメート)を粒径20μm、孔径100nmのシリカゲルに吸着させて高速液体クロマトグラフィー用のキラル充填剤を調製した。各充填剤を分取用カラム(内径2cm、長さ50cm)にスラリー充填し、種々のラセミ体に対する光学分割能を評価した。その結果、これらのキラルカラムは、より高価な10μmのキラル充填剤を充填した分析用カラム(内径0.46cm、長さ2.5cm)とほぼ同じ理論段数と光学分割能を示した。セルロース誘導体のカラムを用いてラセミのプロプラノロールとオキシプレノロールの分割を行ったところ、それぞれ一度に100mg、400mgを完全に分けることができ、これらのキラル充填剤が分取用に有用であることが明らかになった。 新規らセルローストリスフェニルカルバメート誘導体としてトリス(4ーtーブチルフェニルカルバメート)ならびにトリス(3,5ージーtーブチルフェニルカルバメート)を合成し、その光学分割能を評価した。その結果、トリス(4ーtーブチルフェニルカルバメート)誘導体は、これまで実用性の高いキラル固定相として知られているセルローストリス(3,5ージメチルフェニルカルバメート)とは異なる不斉識別能を有する極めて有用なキラル充填剤を与えることが明らかとなった。この新しいキラルカラムを用いると、これまでのセルロース誘導体では光学分割が困難であったニカルジピンが完全に分割できた。 セルローストリス(3,5ージーtーブチルフェニルカルバメート)固定相は、非極性な溶媒に対して溶解性が高く、ヘキサンー2ープロパノールなどを溶離液に用いてその光学分割能を評価することはできなかった。しかし、エタノールー水(70:30)を溶離液に用いると、同じ条件下でセルロース(3,5ージメチルフェニルカルバメート)固定相を使用した時より、かなり高い光学分割能を示し、極めて興味深い誘導体である事が分かった。
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