研究概要 |
セルロースと種々の塩化置換ベンゾイルおよび置換フェニルイソシアナートを反応させ、相当するセルローストリベンゾエートとフェニルカルバメート誘導体を合成した。各誘導体をシリカゲルに吸着させ、高速液体クロマトグラフィー用の充填剤を調製し、種々のラセミ体に対する光学分割能を評価した。その結果、ベンゾエートについては、置換基として電子吸引性基より電子供与性基を導入した方が高い光学分割能を示し、特に、3ーメチルベンゾエートは広範囲のラセミ体を分割し得る有用な充填剤を与える事を見出した。 セルローストリスフェニルカルバメート誘導体については、30種類の誘導体の分割能を系統的に調べた。その結果、光学分割能はカルバメート基の極性とセルロース誘導体の高次構造に強く依存することが明らかになった。高い光学分割能を示す誘導体としては、3,5ージメチルフェニルカルバメート、4ーtーブチルフェニルカルバメート、3,5ージクロロフェニルカルバメートが見出された。特に、最初の二つは極めて実用性の高い充填剤であり、多くの医薬品等に対しても高い光学分割能を示し、今後、広く利用されると思われる。 アミロースについても15種のトリスフェニルカルバメート誘導体を合成し、その光学分割能を評価した。これらのうちでは、3,5ージメチルフェニルカルバメート誘導体が高い光学分割能を示す実用性の高いキラル充填剤を与えた。このアミロース誘導体の下斉識別能は、相当するセルロース誘導体のそれとは大きく異なっており、セルロース誘導体で光学分割できなかったラセミ体をかなりの確率で分割することができ、このカラムも今後、広く利用されると思われる。 セルロースとアミロースのトリス(3,5ージメチルフェニルカルバメート)を用いて、大量分取に使用できる充填剤を調製し、その実用性を評価することができた。
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