研究概要 |
微水系バイオリアクターシステムの一例として、リパーゼによる油脂のグリセロリシス反応を取り上げ、小型攪拌槽を用いて、この反応を回分式の実施して、次の諸点を明らかにした。 1.反応生成物(1-モノグリセリド、2-モノグリセリド、1,2-ジグリセリド、1,3-ジグリセリド、遊離脂肪酸)の分別定量法を検討し、TLC/FID法が簡便かつ正確であることを認めた。 2.市販の13種類のリパーゼのグリセロリシス触媒活性を調べ、高活性で入手しやすいPseudomonas fluorescensのリパーゼを選んだ。 3.反応の経時変化を追跡したところ、反応の初期では、1,2-ジグリセリドの生産量が、1,3-ジグリセリドより多いが、数十分後には逆転した。このことより、アシル基の分子間移転は、β位よりもα位が優先し、β位のアシル基は、α位に非酵素的に分子内移転することがわかった。 4.トリグリセリド減少の初速度はグリセリン中の水分の1.7乗にほぼ比例した。また、遊離脂肪酸の生成は、グリセリン中の水分が4%以下では無視小であり、4%以上では、(水分-4・0)の1.5乗に比例した。したがって、この反応では、水分は最も重要な影響因子であることがわかった。 5・反応の初速度(トリグリセリドの減少速度)は酵素濃度に比例し、微水系酵素反応の速度も酵素濃度に比例することがわかった。 6.反応の初速度(トリグリセリドの減少速度)に及ぼす温度の影響は、アレニウスの式で表わすことができ、活性化エネルギーは6.13kcal/molであった。また化学平衡時の組成は25〜60℃の範囲ではほぼ不変であった。 以上の結果より、遊離脂肪酸が生成しないように、可能な限り高い反応速度を維持するためには、微水分を最適に制御する必要があることがわかった。今後は連続反応を実施する予定である。
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