微水系バイオリアクターシステムの速度論を追及するため、酵素を含んだ微水有機溶媒中での水の存在形態、および2つの異なるタイプの反応について定量的に研究し、次のような諸点を明らかにした。 1.酵素蛋白質と結合した水(結合水)および遊離状態で有機溶媒中に溶解している自由水を区別して分別定量する実験方法を確立した。蛋白質吸着水と自由水との間の平衡関係は、水と混和しない有機溶媒では、通常のラングミャー型の吸着平衡を示したが、水と混和しない有機溶媒では単調に増大するような異常な吸着平衡関係を示した。また、粗酵素の場合は、夾雑物質にも水は結合し、従って、平衡関係は酵素の純度にも依存することが判明した。 2.グリセリンと油脂の2液相系でリパーゼによるグリセロリシス反応を回分式および連続式で実施した。トリグリセリド減少の初速度は、グリセリン中の水分の1.7乗にほぼ比例し、また遊離脂肪酸の生成は、グリセリン中の水分が約4%以下では無視小であり、4%以上では、(水分ー4.0)の1.5乗に比例した。微孔性薄膜型バニオリアクターを用いた連続反応の半減期は40℃で約21日であった。副反応(加水分解)が起こり始める水分は酵素の純度によって異なり、これは上記1の知見で説明できた。また、油脂中の過酸化脂質により、反応が阻害され、かつ失活が促進されることが判明した。 3.ベンゼン中で、リパーゼの粗酵素粉末を分散懸濁させて、15ーヒドロキシペンタデカン酸の分子内エステル化反応の初速度および収率に及ぼす水分(結合水および自由水)の影響を定量的に調べた。低水分量領域では、酵素蛋白質への不十分な水和が反応を律速し、高水分領域では、可逆反応律速で説明できた。
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