研究概要 |
1.走磁性細菌の分離及び培養を試みた。淡水性走磁性細菌以外に海洋性走磁性細菌を発見した。走磁性細菌は池,沼,海岸等の沈殿物の表層にその90%が分布していた。培養は沈殿物に炭素源,窒素源,鉄,抗生物質等を加えることで、従来10倍程度しか増殖させることができなかった走磁性細菌を40倍まで増殖させることができた。また、最適塩濃度(淡水性0.1%以下,海洋性3%)、微好気条件(気相酸素濃度0.5〜6%)、pH6.0〜6.5が走磁性細菌の最適生存条件として示された。 2.走磁性細菌からの磁気微粒子の分離とキャラクタリゼーションについて検討した。磁気微粒子は走磁性細菌をリソチーム,リパーゼ,トリプシン,NaOHで処理することで分離できた。エネルギー分散型分析装置により主元素は鉄と酸素であり、磁気微粒子を覆う被膜は有機質であることが示された。電子線回折,高分解能透過型電子顕微鏡によりこの磁気微粒子はマグネタイトであることが明らかになった。試料振動式磁力計により磁化50emu/g保持力230Oeであることが示された。 3.走磁性細菌より分離した磁気微粒子への酵素の固定化について検討した走磁性細菌からリゾチーム,リパーゼ,トリプシン及びアルカリ処理により磁気微粒子を分離し、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びグルタルアルデヒドで処理することでグルコースオキシダーゼ,ウリカーゼが固定化できた。人工磁気微粒子(Znフェライト及びマグネタイト)に酵素を固定化した場合、担体である磁気微粒子自体の金属の溶出により酵素活性が阻害された。これに対し走磁性細菌の磁気微粒子は人工磁気微粒子に比べ酵素固定化量は約100倍高く、酵素活性も10〜40倍高く、酵素活性への阻害はなかった。また、固定化された酵素は少なくとも5回の再使用が可能であり、酵素の溶出もなく安定に固定化された。
|