研究概要 |
従来の好熱菌宿主ベクター系(pTBシリーズ生育上限60℃)に比べ更に高温で安定な変異プラスミドpTRA90(6.7MDa,【Km^r】,【Tc^r】,上限63℃)及び変異プラスミド保持株の高温培養によって得た挿入を有するプラスミドpTRZ90(7.9MDa,【Km^r】,【Tc^r】,上限65℃)を取得した。両プラスミドは、小型化されpTRA919(3.9MDa,【Km^r】),pTRZ919(51MDa,【Km^r】)となり、それぞれ同様の熱安定性を示した。小型プラスミドの詳細な制限酵素切断点地図を作成し、断片交換により変異と挿入の位置を限定した。変異部位はカナマイシン不活化酵素(KNTase)をコードする遺伝子(kan)のAva【II】断片内に限定(460bp)され、塩基配列決定によりkan遺伝子の304番目のGがAにトランジションしていることが判り、アミノ酸残基もGIn102→Lysに置換していた。別途酵素熱安定性が向上していることも示され、同置換が安定化に寄与していると結論した。挿入位置は、プラスミドの複製に関与する領域のすぐ上流であり大きさは1902bpと推定された。又サザンハイブリダイゼーションにより挿入領域が宿主(Bacillus stearothermophilus)染色体DNA由来であることが判明し、プラスミド上のこの領域と、染色体DNAとの相同性が、プラスミド安定化の原因であると考えられた。また、変異と挿入は共存させることにより、相乗的にプラスミド安定化に寄与することも明らかとなった。 次に得られた安定なプラスミドpTRZ90にB stearothermophilus CU21由来耐熱性α-アミラーゼ遺伝子をクローン化し小型化したpZAM2685MDa(【Km^r】,amy 【T^+】)を作製し、プラスミド安定性とアミラーゼ生産性を比較した。その結果pZAM26は、64℃でも100%のプラスミド保持率を示し、アミラーゼ生産性もpTBシリーズに比べ、53℃でほぼ同じ、57℃で約2倍、62℃ではpTBシリーズでは生育不能に対し、pZAM26保持株は57℃と同様の生産能を示した。このことより、本プラスミドは、高温環境下におけるタンパク質安定生産に有効なものであると結論した。
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