研究概要 |
液体ヘリウムによる急速凍結装置を購入し、置換固定した。トマト葉肉細胞内の葉緑体の微細構造、特に従来法で観察されなかったチラコイド膜の微細構造を解明した。材料としてトマト(品種サターン)をガラス室内で30日間土耕栽培し、その完全展開葉の一部を、カミソリで1mm幅に切りその切断面が圧着面となるようにして液体ヘリウム温度(4.2°K以下)に保った純銅ブロックに圧着、凍結後、2%オスミウムアセトン(-80℃)で48時間置換固定した。徐々に温度を上げ、室温でアセトン、プロピレンオキサイドにより脱水、エポン包埋した。超薄切片は、ウランと鉛の二重染色を施し、日立HU-12A,H7000で観察した。チラコイド膜は非対称で、基質に面した電子密度の高い第一層、中間の明るい第二層、空腔側のやや電子密度の低い第三層の三層から構成される。チラコイド膜が重なったグラナ部分では、第一層と第一層との重複部分が、直径約4mmの電子密度の高い粒状構造によって構成され、互いに融合しているかのように観察される。第三層は、グラナ部分とストロマチラコイドで異なった像を示す。グラナ部分では直径約2〜3mmの粒状ないしは不定形の集まりがほぼ一定周期で繰り返され、不連続になっている。この第二層のグラナ部分での一定期期の不連続性は、ストロマチラコイドでははっきりしない。また、不連続な層の横幅が約16mmであり、これまでの知見から提出されている光化学系【II】のモデルと一致する、ところから、このひと連なりが、光化学系【II】に対応するものと考えられる。これらの構造が、水ストレス,塩類ストレス,光ストレスによってどのように変化するかは今後の課題である。
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