研究概要 |
1.前年度において, 本学の多腐植貭黒ボク土耕地から, VAミコリザ菌の胞子として, Gigaspora属2種及びGlomus属数種(未同定)を分離したが,それらの乾土100g当りの数を調べたところ, 耕種条件により若干の差異はあるが, Gigasporn属数ヶ〜十数ヶに対し,Glomus属10〜500ヶと,後者の方がはるかに多いことがわかった.また,ダイズとのミコリザ形成に及ぼす地温レスポンスをみたところ,Glomus属の方がGigaspora属より, より低い温度(20〜25℃)からミコリザ形成に入り生育に好影響を支えるのに対し, Gigaspora属は30℃を越えてもなお ミコリザ形成が十分に進まない場合の多いことが示された. 2.現代の畑作において, いわゆる「マルチ栽培」が慣行化しているが, それは地温上昇に伴う初期生育促進に期待することが多い.その原因のひとつに, ポリマルチ処理による生育初期におけるVAミコリザ菌感染の10〜20%以上の促進に伴う土壌上の吸収増大があることが示された. 3.作土層(15cm域へ粉炭(10tom/ha)を混入してダイズを生育させたところ, 初中期の地温を1〜2pc高めるとともに,VAミコリザ感染を10〜20%高めた. 地温上昇に入ったのちでの播種(6月中旬の場合,VAミコリザ形成の差はP吸収には反映しなかったが, 生育後半の子実肥大期の落葉を顕著に抑制し, 子実生産に好結果をもたらすことが示された. 4.γ線処理による無菌土壌をポットにつめて, VAミコリザ胞子添加により作物の生育反応をみると, ダイズやヒヨコマメでは, 土壌有効Pが比較的低い(2〜20ppm,Bray II)条件下で ミコリザ形成に鋭敏に反応して, P吸収の促進と生育の顕著な増加がみられ, 開花期以降の落葉抑制を通じて子実生産を高める例が多いのに対し,トウモロコシ,ミムギでは,VAミコリザ形成が同レベルに進行する場合であっても, 生育靖進は殆んどもたらさないばかりかむしろ「寄生」関係になることが示された.
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