研究概要 |
コムギ胚芽のポリペプチド鎖伸長因子1は、αββ´γの4種類のサブユニットから構成され、αはアミノアシル-tRNAをリボソームに結合させる因子であり、βおよびβ´は、EF-1α・GDPからEF-1α・GTPを再生させる因子である。EF-1αββ´γは、[【^(32)P】]ATPと反応させるとβのみが特異的にリン酸化されβ活性が数倍上昇することが明らかとなったので今年度は、主として、リン酸化酵素の本体を追跡した。その結果、分子量40,000のKinase(EF-1β Kinase)を単一にまで精製することに成功した。このKinaseはリン酸供与体として、ATPおよびGTPを利用し、スレオニンをリン酸化した。この酵素は、カゼインおよびホスビチンをリン酸化し、ヒストンH2aのリン酸化は認められなかった。その他、この酵素は、ヘパリンにより阻害されることなどから、カゼインキナーゼ【II】に類似の性質を有する新しいKinaseと推定した。 EF-1β Kinaseは、粗酵素の段階では、CGMPおよびcAMPの影響が認められたが、精製酵素では、これらのヌクレオチドの影響は認められなかった。精製途上で、Kinaseの制御に関与する調節サブユニットが脱落した可能性があるので、次年度にこの推定を確める研究を行う。 現在、リン酸化によるβ活性上昇の機構を解析中であるが、βのリン酸化により、EF-1α・GDPのGDPと外部のGTPとの交換反応が数倍上昇することが明らかにされたので、次年度さらにその分子機構を明確する。 以上のように、EF-1βのリン酸化による活性制御機構の骨格を確立することができ、当初の目的を達することができた。
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