1.無胞子酵母Candida maltosaは、頻用される真核生物の蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミドに誘導性耐性を示し、それがリボゾームの変化によって耐性化することを発見した。更に、感受性であるSaccharomyces cerevisiaeを用いて、耐性化に関与すると思われる遺伝子のクローニングに成功し、この遺伝子をS.cerevisiaeに導入するとS.cerevisiaeでもリボソームに変化が生じてシクロヘキシミド耐性化することを示した。 2.この遺伝子(RIM-Cと命名)を短縮化しジデオキシ法で塩基配列を求めた結果(1140bp)、最大55アミノ酸からなるopen reading frameが存在することがわかった。しかし、S.cerevisiaeのイントロンの共通配列に類似した配列もあるので、このopen reading frameが翻訳されていない可能性もある。 3.RIM-Cをコピー数の異なるベクターに捜入して、S.cerevisiaeに導入した結果、多コピープラスミドを用いた時のみシクロヘキシミド耐性を示した。 4.このRIM-Cをプローブとして、C.maltosaの全DNAのSouthern解析を行ったが、耐性化誘導の時に遺伝子増幅は見られなかった。 5.C.maltosaのrRNAをRIM-CをプローブとしてNorthern解析したが、耐性化に伴った新しいrRNA種の付加は検出できなかった。 6.C.maltosaのリボソーム蛋白質を二次元電気泳動等で解析したが、新しい蛋白種の出現、既存蛋白種の消失や移度変の変化は検出できなかった。 7.以上のことから、耐性化に伴うリボソームの修飾は既存分子種の修飾によるものと推定されるが、その化学的実体については今後の研究が必要である。
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