研究概要 |
アセトラクテート合成酵素(ALS)の材料として適当な植物の選抜においては、植物界には少なくとも2種類のALSが存在し、それぞれpH5及びpH8に最適pH値をもち、後者がスルホニルウレア系除草剤の標的になることが判明した。後者の強い植物としてはイネ,オオムギ,及びコムギをあげることができる。両種の酵素についてバリンによるフィードバック阻害を調べたところ、その阻害を受けるのは後者のみである。pH5に最適pHをもちスルホニルウレア系除草剤及びバリンによる阻害を受けない前者は、分岐アミノ酸生合成ではなくてピルビン酸分解に作用するものと想定される。 ALSの保存条件に関しては、pH7.0,-20℃の条件下でもかなりの保存性を示すが、-80℃のディープフリーザーであれば1カ月後でも十分な活性の得られることが判明した。 また、ピルビン酸と構造が類似するグリオキシル酸の、コムギ及びオオムギの葉ならびにダイズの種子より調整したALSに対する影響を調べたところ1mMで75%の阻害を示し、植物間の感受性の差は認められなかった。この阻害について、その阻害様式をLineweaver-Burkのプロットにより求めた結果、グリオキシル酸はALSの基質であるピルビン酸と拮抗してその作用を阻害することが判明した。 以上のことから、ALS阻害を指標としてその阻害剤(除草剤)を見出すためには、至適pH8のタイプのALS(イネ,ムギ類)を用いて実施し、保存にあたってはpH7.0,-20℃あるいはより低温(-80℃)とすること、またピルビン酸と拮抗するような構造類似の化合物を阻害剤候補とすることも一案であると判断された。
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