研究概要 |
アセトラクテート合成酵素(ALS)の活性の測定は,反応生成物であるアセトラクテートを脱炭酸してアセトインとして比色定量してきたが,この場合アセトインそのものが直接生成しても酵素活性の計算に入ってくるので,正確には生成するアセトラクテート自身を定量する必要がある. 本年度は,アセトラクテートを化学合成したあと,(1)イオン交換カラム付HPLCによるアセトラクテートとアセトインとの分別定量,および(2)アセトラクテートおよびαーアセトーαーヒドロキシ酪酸(ALSによりケト酪酸を基質として生成しイソロイシン生合成前駆体となる)を酸性条件下,金属触媒とともに80℃に加熱してジケトン化合物とし,空気蒸溜後メタノールに吸収してガスクロマトグラフィ(ECD)定量する方法により酵素反応の本質を明らかにしてきた. 昨年度報告したクロルスルクロンによって阻害されないALSでは,ピルビン酸からアセトラクテートが検出されず,またアセトラクテートを基質としてアセトインを生成する反応もなく,この酵素はピルビン酸からアセトインを直接生成しているものと推定される. また,クロルスルクロンにより阻害される真のALSでは,アセトラクテートのみでなく,αーアセトーαーヒドロキシ酪酸の生成も阻害され,その50%阻害濃度もほぼ同様で,ALSがバリンとイソロイシンの両者の生合成に関与していることを伺わせた. 酵素試料作製保存には,オオムギ葉を液体窒素中で磨砕したあと,緩衝液で抽出した液の50%硫安塩析物を再び液体窒素で凍結させたものを-20℃で保存すると安定であることが判明した. 一方,候補化合物探索では,グリオキシル酸がALSの阻害作用をもつことを見出したが,微生物分解のためか土壌処理剤としての除草活性は見られなかった.
|