研究概要 |
〔1〕サケ成長ホルモン(GH)のエゾアワビにおける成長促進効果: (方法)サケGHは遺伝子組み換え法によって生産された標品を用いた. 本標品は0.01%デオキシコール酸(DCA)を含む海水で溶解した. サケGHをアワビ貝殻筋肉に, 1週間に1回, 合計12回注射した. 投与量は2ng/g, 20ng/g, および200ng/gとした. 対照群には0.01%デオキシコール酸を含む海水を注射した. 各実験群にアワビ用ペレットを1日1回1g給餌した. シロサケGHの成長促進効果は殻長, 殻幅, および体重の増加によって評価した. (結果)サケGHを2ng/gおよび20ng/g投与した群のアワビには対照群に比べて有意に高い成長率が認められた. しかし, 両GH群の間に投与量依存的な成長促進効果は認められなかった. 一方, サケGHを200ng/g投与した群と対照群の成長率に差は認められなかった. 〔2〕アワビGH様物質の同定: (方法)アワビ50個体からサケGH抗体で染色される腎臓部位を採取した. この組織を塩酸アセトン, 次いでアルカリ水溶液で抽出した. 抽出物をゲル瀘過, ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDSーPAGE)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付して分画した. 分画物中のアワビGH様物質の検索はサケGH抗体を用いるウェスタンブロッティング法で検索した. (結果)サケGH抗体で染色されるアワビGH様物質は塩酸アセトンで抽出された. このタンパクは難溶性であるため, 抽出物の0.1n酢酸に対する不溶部をSDSーPAGEに付し, サケGH抗体に対して陽性のバンドを切り出した. 次いで, ゲルからGH様物質を70%ギ酸で抽出した. この抽出物をHPLCに付し, GH様物質を精製した. 本標品はSDSーPAGE後のタンパク染色で単ーバンドを与えた. 分子量は22,500であり, アミノ酸残基数は約180と算定された. アミノ末端残基はダンシル法で同定されなかったことから, ブロックされていると考えられる.
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