研究課題/領域番号 |
61470139
|
研究種目 |
一般研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
水産化学
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
川内 浩司 北里大学, 水産学部, 教授 (70050523)
|
研究分担者 |
高橋 明義 北里大学, 医学部, 助手 (10183849)
厚田 静男 北里大学, 水産学部, 講師 (80050673)
平野 哲也 東京大学, 海洋研究所, 教授 (70013571)
|
研究期間 (年度) |
1986 – 1988
|
キーワード | 成長ホルモン / プロラクチン / 共通の遺伝子 / 無脊椎動物 / エゾアワビ / 成長促進効果 / 免疫組織染色 / 腎臓組織 / 食道組織 / GH様タンパク質 |
研究概要 |
I.成長ホルモン(GH)とプロラクチン(PRL)は脳下垂体から分泌されるホモロガスなタンパク質ホルモンである。我々は魚類と捕乳類のホルモンの構造を比較し、両ホルモンの遺伝子の重複の時期を約5億年前と推定した。この推定によれば、両者の共通の遺伝子は無脊椎動物に起源を有し、脊椎動物の進化の極めて初期に分岐し、機能の分かを起こしたと考えられる。 II.サケGH、PRしおよび両者の抗体を用いて、無脊椎動物のエゾアワビにGH様物質を検索した。ホルモン溶液にアワビ稚貝を浸漬すると、GHは体重と殻長を顕著に増加させた。PRLは体重を増加させたが、殻長の伸長に効果を示さなかった。GHの筋肉注射でも成長促進効果を示したが、高濃度では効果が小さく、投与量依存性は認められなかった。従って、アワビに対するGHの有効濃度範囲は極めて狭いことを示している。 III.サケホルモン抗体による免疫組織染色で、陽性部位は腎臓と食道側 部側壁の上皮細胞に認められた。これらの組織が抗原で吸収した抗体で染色されないことから、これらは抗原に特異的であり、サケGHあるいはPRLに類似のタンパク質がアワビの2つの部位に存在することを示唆する。 IV.エゾアワビの腎臓および食道組織からサケGH抗体に対して免疫反応陽性の物質を検索した。腎臓組織の抽出から、分子量の異なる2種類の免疫陽性タンパク質が得られた。ゲル電気泳動で、一方は23Kの単一である。他方は平均30Kの3成分からなり、この3成分は逆相高速液体クロマトグラフィーでも分離されなかった。30Kタンパク質はエゾアワビ稚貝の成長を促進し、その部分構造はサケGHに類似性を示した。また、食道組織の免疫陽性タンパク質は腎臓の30Kタンパク質と同一物質であった。以上の結果は、エゾアワビGH様タンパク質が存在し、その遺伝子は腎臓と食道部で発現していることを示唆する。
|