研究概要 |
タバコモザイクウィルスRNAのΩ断片(5'先導域を含み開始AUGまでの70残基よりなる)を【^(32)P】で3´末端標識し、ウサギ網状赤血球溶血系中で開始複合体を形成した。形成後に紫外線照射しΩ断片中のAUGコドンと相互作用をもつリボソーム蛋白を架橋し、2次元ゲル電気泳動でそれらの蛋白を同定した。40S複合体ではL5,S7,S10,S25とS29が、80S複合体ではL5,S7,S25とS29が開始AUGと相互作用する蛋白として同定できた。これらの蛋白は他の研究者の報告から、すべてが隣接していることが知られている。したがって開始AUGコドンと相互作用をする蛋白が集合してリボソームP-siteのドメインを構築し、しかもmRNAの開始AUGとの作用に機能すると推定される。また、40S複合体中の低分子RNAを分析したところ5SRNAの存在が確認でき、40S複合体ではL5-5SRNA複合体の形で蛋白合成開始段階で何らかの機能をもつと推定される。L5蛋白の機能上の重要性から、ラットのL5蛋白のcDNAクローニングを行いアミノ酸配列を推定した。なお調製したL5のcDNAは、ミクロシークエンサーで決定したL5蛋白のN末端46残基と一致しており、このcDNAがL5であることを確認した。L5に対する2つのcDNAクローン(cDNAとして共に約1050残基)の塩基配列の解析から、L5蛋白は297のアミノ酸残基よりなり、N末端とC末端側に塩基性アミノ酸残基が多く含まれていた。2つのL5cDNAの一次配列は1ケ所で異なり、177番目のThrのコドンが1つはACT,他はACCであった。この結果は、L5蛋白の遺伝子は少なくとも2つ発現している可能性を示唆するものであるが現在さらに検討中である。もう1つのL5cDNAの配列上の特色は、5´非翻訳領域にL5の翻訳領域の読み取り枠と一致した9個のアミノ酸が指定されていた。しかしながらこのペプチドのN末端Metに相当する周辺塩基配列がCGCATGCと翻訳される可能性が低い配列であったが、詳細はさらに現在検討中である。
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