研究概要 |
1.大腸菌ペニシリン結合蛋白質1Bのγ-コンポーネントを精製し、結晶化を試みた所、界面活性剤β-オクテルグルコシドの存在下に長径0.8mm程度の六角柱状結晶を得ることに成功した。一方、同蛋白質にアミノベンジルペニシリンを結合させたものからも同様な六角柱状結晶を得た。 2.誘導型β-ラクタム高度耐性ブドウ球菌からβ-ラクタム誘導性,β-ラクタム低調和性のペニシリン結合蛋白質の遺伝子をクローン化し、塩基配列を決定した。その結果、このペニシリン結合蛋白質(MRSA-PBPと名づける)の遺伝子のプロモーター部分はブドウ球菌のペニシリナーゼ遺伝子のプロモーター部分と極めて高い類似のあることがわかった。またMRSA-PBPをコードするコーディング・フレームの塩配列から推定した同蛋白質のアミノ酸配列は、大腸菌のペニシリン結合蛋白質2(大腸菌細胞の桿菌形態形成に関与する蛋白質)及び同3(大腸菌の細胞分裂に関与する蛋白質)のそれと高い類似があった。MRSA-PBPはペニシリン結合蛋白質やβ-ラクタマーゼのペニシリン結合部位周辺のコンセンサス配列を二ケ所にもち、その一つはN末端に近い所でブドウ球菌のペニシリナーゼと高い類似性を示し、他は分子の中央部にあって大腸菌のペニシリン結合蛋白質2,3と高い類似性を示していた。このことからMRSA-PBPの遺伝子は、あるペニシリナーゼ遺伝子のプロモーター部分からコーディングフレームの頭にかけてと、ある細菌のペニシリン結合蛋白質の遺伝子のコーディングフレームの大部分とが融合して出来たものと考えられる。またサザン・ブロット・ハイブリド形成法により、このコーディングフレーム部分はブドウ球菌のペニシリン結合蛋白質ではないと考えられる結果を得た。
|