研究概要 |
免疫における認識の基本原理をタンパク質の高次構造の視点から解明することを目的として研究を行いつつあるが、昭和61年度の研究実績の概要はつぎのとおりである。1)選択的に重水素化したモノクローナル抗体の調製:抗ダンシルマウスモノクローナル抗体(Ig【G_1】、Ig【G_(2a)】、Ig【G_(2b)】、IgG)を産生するスイッチバリアント・ハイブリドーマを用いて、無血清化、重水素ラベルを行った。ハイブリドーマを無血清培地(日水製薬、NYSF-404)を順応させたあと、チロシン-2【d_(3,5)】を添加した培地を用いて重水素化ラベルモノクローナル抗体を調製した。【^1H】NMRの測定により、チロシンが選択的にラベルされていることを確認した。分子量16万の巨大タンパク質であるにもかかわらず、スピンエコー法、スピン拡散法などの貢法を組み合せることにより、予想をはるかに上まわる分解能の向上が達成された。2)タンパク質抗原上のエピトープの構造とモノクローナル抗体による認識:リゾチーム分子上のエピトープに対応するペプチドの単離、精製を行い、高次構造を保持するタンパク質から分離されたペプチドがどのように相互作用するか、intactなリゾチーム分子の場合と比較した。ペプチドと抗体の相互作用を解析する手段として、スピン拡散と分子間核オーバーハウザー効果を組み合せた一般的な方法を開発した。この結果、ペプチドが従来考えられていたよりもはるかに広い範囲にわたって、抗体によって認識されていることが明らかになった。3)プロテインA遺伝子のクローニングと改変:staph.aureusよりプロテインA遺伝子をクローニングし、さらに異なる数のドメインをもつ遺伝子断片を得た。次年度はこれらに対応するタンパク質の発現、さらに重水素ラベルした抗体との組合せによるタンパク質・タンパク質相互作用の高次構造解析へと進む予定である。
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