この研究の目的は、森林の生長のメカニズムを物質生産の観点から明らかにするために、物質生産モデルを基礎とした森林生態系モデルを開発することである。 特に今回は、温帯域の森林を対象にしている。 当初の計画通り、モデル計算を迅速に行なうために、マイクロコンピュータ(PC98VM2)を購入し、モデル計算に活用している。 さらに、このコンピュータにストリーマ付固定ディスク装置を取り付けて、プログラムやデータを数多く記憶させている。 今年度購入したこれらの備品を活用して、モデル計算を行たった。 まず、熱帯とは大きく異なる光環境が温帯の生産力にどのような影響を及ぼし得るかの検討を行なった。 その結果、日最大照度は熱帯よりも低い温帯において、夏の日長の長いことが、温帯の生産力に大きな効果を持ち得ることが明らかとなった。 従って、一日あたりの光エネルギーとしては熱帯と同じであっても、比較的弱い光が長時間あたる温帯において、植物の生産には非常に効果的なことが分かった。 続いて、この温帯における効率的な生産力が、暖温帯の常緑広葉樹林の生長にとって、どのような意義があるかを、温帯林を対照とした森林生態系モデルを作って、現在検討中である。
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