研究概要 |
研究計画にしたがって, 下記の諸研究を行い, 以下の知見・成果を得た. ○林床活動性の7種のアリの営巣場所と採餌場所の変化を春の活動開始時から秋の活動停止時まで継続調査した. 巣穴の分布の変動は各種に特徴的であり, 特の巣の空間構造とその変化様式の違いが, 小スケールでの異種間の空間分割において重要であることが明らかとなった. ○潮間帯岩礁に棲息する藻食類のヨメガカサとキクノハナガイの間には, 冬期両種の幼貝ともイソガワラを専食する点で, 競争関係にあるが, イソガワラの分布上限はヨメガカサの上方からの摂食行動にもとずいて規定されており, さらにこれがキクノハナガイの上方への分布を抑制していることが明らかとなった. ○淀川河川敷の約1haのヨシ原に棲息する, アカネズミとハタネズミの分布を経月的に調ベた. 両種は, 生息場所選好性を多少異にするが, 一方の種の密度が増大すると, 分布域を拡大し,他方の種の分布域に入り,抗道の入口を供用するようになった. ○京都周辺で冬期にみられるカラ類混群は, エナガ群を中心として,これにシジュウガラ・ヤマガラ・コガラ・メジロ・コゲラなどが, 随時参加して毎日成立する. 従来エナガ群の構成は,安定しているものとされていたが,不安定な時期があることが明らかとなった. さらにエナガの初期造巣ペアーが必ずしも産卵まで継続するとはかぎらず,ペアーの組換があり,これが初期造巣から産卵までの期間の長さに関連しているよいである. カラ類混群の, 各種繁殖期入りにともなう分散・定着過程は継続追跡中である. ○底質着生卵を隣接して保護するカワスズメ科2種の魚類の,卵・仔魚捕食者接近時の,攻撃・防衛行動の分析を継続し,防衛負担軽減率を求めた.
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