研究概要 |
発芽ヒマ種子にはリン脂質および糖脂質をオルガネラ膜間で運搬する脂質転移タンパク質(LTP)を見出された。ヒマLTPの全アミノ酸配列が決定されたが、別のヒマ種子のロットから同種のLTPを精製し、アミノ酸配列を調べると、20%も相同性が異なるタンパク質であることがわかった。両タンパク質はクロマトグラフィーの挙動が全く同じで、分子量の差もほとんどなく、イソタンパク質として一つの植物に共存するのか、変種にそれぞれ含まれるのか検討中である。 発芽ヒマ種子のLTPから得た抗体はトウモロコシ芽生えから得たLTPと反応するが、ホウレンソウ葉から得たLTPとは反応性が弱いことがウエスタンブロット法で得られた。アミノ酸配列の比較ではヒマLTPとホウレンソウLTPとは40%の相同性しか見出されない。 発芽ヒマLTPは発芽5日目に活性が高まり、ウエスタン・ブロット法で調べると子葉組織で9.4キロダルトンと7キロダルトンの2種のLTPが誘導されることがわかった。LTPは胚軸および胚乳にも含まれ、いずれも細胞またはオルガネラが増殖する発芽5日目に活発に誘導され、このタンパク質が組織の成長部位で合成されることが示唆される。 発芽ヒマ種子の3日目子葉からmRNAを分画し、LTPのmRNA含量の高い画分を得た。このmRNAを用いてGublerとHoffmanの方法によりcDNAを作成した。これにdC付加を行ない、dG付加したpUC18に組み込んだ。これをHanahanの方法でE,ColiJM83に形質転換させ、約5,000のコロニーを得た。現在、このクローン中から合成プローブを用いてLTPのDNAを含むクローンを探索している。
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