研究概要 |
発芽ヒマ種子に非特異性脂質転移タンパク質(ns LTP)のイソ型が存在することは, 61年度の報告書に記したが, その後, 得られた結果と共にまとめると次のようである. 発芽ヒマ種子の胚乳には8.KD(キロダルトン)のns LTPが見出され,一方,子葉および胚軸(下胚軸と幼根)には9.4KDと7KDのns LTPが見出された. 検出は最初に発芽ヒマ種子から單離されたns LTP(9.4KD)に対する抗体を用いるウエスタン・ブロット法により行った. この結果, 最初に單離, 精製されたヒマns LTPは子葉や胚軸に含まれるものであることがわかった. ヒマにおけるns LTPの示すこのような組織特異的所在の生理的意義は興味ある現象であり, 今後の解明課題である. 一方, ヒマの子葉および胚軸に含まれるns LTP(以下ns LTPー9という)に関しても, クロマトグラフィー分画の最終段階でしか分離できないイソ型が存在し, 最初に單離したものから順に, ns LTPー9A,9Bおよび9Cと命名した. 3つのイソ型の全アミノ酸配列が決定され, すべて92個のアミノ酸残基からなる. 9Bと9Cは9Aと同様に脂質転移活性を示し, 抗9A抗体と反応するが, 9Aに対して, 9Bと9Cのアミノ酸配列の相同性は, それぞれ, 68%と35%しか示さなかった. しかしながら, 3つのイソ型の間で8個のシステイン残基が完全に保存され, 4つの架橋をつくっている. N末端近くと鎖中位, 鎖中位とC末端近くが架橋により一か所に集められ, ヒマns LTPの表層附近に疎水性パッチをつくっていることが示唆される. また, 鎖後半に多いイオン性残基のうち, 鎖中位の3残基が3つのイソ型の間で完全に存保されているので, この部位と脂貭分子の親水性部位との相互作用が考えられる.
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