研究概要 |
1.ミカヅキモ Closterium ehrenbergiiの交配群Aの群内交配の接合胞子の発芽体中に稀に出現する同質倍数体のクローン培養を得た。これらのクローンの中で同一接合胞子より生じたZクローンが両方とも交配型マイナスであったものは交配型遺伝子【mt^+】の【mt^-】の両方を持ち【mt^-】が優性であると考えられたので詳細に研究を行った。栄養細胞の大きさが交配群Aの範囲を越えて非常に大きいこと及び染色体数が倍加していることからこれらのクローンは明らかに倍数体であることを確認した。交配群Aのプラスとの戻し交配による"3倍体"接合胞子の減数第一分裂中期の染色体像及び子孫の生存率がほぼ正常であることなどから、交配群Aの染色体構成は倍数性を示すものと結論した。また子孫の交配型の分離が1:1であるのは、1個の優性の遺伝子【mt^-】によって交配型が決定されることによると考えた。 2.マイナスの栄養細胞に薬剤処理をし、2個の【mt^-】遺伝子を持つ人工倍数体を作り、交配による子孫の交配型の分離が大きくマイナスに偏ることを確認した。分離比の値から交配群Aの倍数のレベルを推測する実験を行っている。 3.交配群A,B,H間では接合子が得られるがその子孫の生存率は非常に悪い。多数のクローン間組合せの交配を行い、稀に得られた比較的増殖の良い雑種株について研究を行った。栄養細胞の大きさ,形態的特徴,交配型等よりこれらの雑種株は異質倍数体である可能性が高いことを確認した。 4.オニノカナボウTriploceras gracileの全生活史を培養により初めて明確にした。染色体が大きく数も比較的少ないこと及び接合胞子より発芽体が生じる過程は鼓藻類の中では特異な存在であることを確認した。同種にはヘテロタリックとホモタリックの系統が存在し、両者の接合胞子の形態に差異があることも確認した。
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