ツユクサ科諸属の胚発生、特に主根の組織発生を観察し、さらに発芽後の幼植物における主根組織の発達を追跡した。いずれの属でも主根の根冠は胚の原表皮から並層分裂によって外生的に発生する。ところが発芽後に、根冠内部の組織が溶解して空洞ができ、これによって根冠は外層と内層とに分断される。外層は後に、伸長してくる根の本体によって突き破られ、主根の基部をとりまく傘形の付属物となって残る。内層だけが根の本体に貼りつき、本来の根冠としての機能を果たす。この外層がやはり根冠の一部であるのか、それとも真の根冠は内層だけで、外層はイネ科に特有とされる根鞘(Coleorrliza)に相当するものなのか、現状では両様の考え方が可能である。 上記と比較するため、イネ科の胚と根の発生をジュズダマ属(Coix)について研究した。この属の胚では、共通の根鞘の内部に4本の根が形成され、いずれも同一方向に平行して成長するため特異な形態となる。発芽後にはすべての根が根鞘を破って伸びるので、イネ科には主根が無く、すべて内生的な不定根であるというGuttenberg(1968)の説が裏づけられる。これらの結果は、1987年7月Berlinの国際植物学会議で発表すべく登録されている。 関連するラン科の種子無菌培養による幼植物と地下器官の発達についても、同年8月Marburgの国際寄生植物シンポジウムで発表する予定である。 ホシクサ科については、各地で研究材料植物の採集を行ない、胚発生、発芽、根の組織発生の研究を継続中である。 これらの組織発生の経過をコンピューターグラフィックスによって立体的及び動的に表現し、解析するためのソフトウエアを作製中である。Sch【u!¨】epp(1966)の根端分裂組織3次元モデルを基本として、これを画面上で回転させること、各方向の断面図を作ること、成長過程を追って変形させることなどを試みている。
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