研究概要 |
1. カイコ前胸腺刺激脳ホルモン(PTTH)をコードするゲノムDNAの構造解析ーカイコゲノムDNAから4KーPTTHの遺伝子の5個単離し,そのヌクレオチド配列を決定した. そのうち4個の遺伝子は極めて近接して存在する. すでにペプチド分析から,4KーPTTHがインスリンとアミノ酸配列相同性を示すことが明らかにされているが,その遺伝子のヌクレオチド配列はインスリンのそれとさらに高い相同性を示し,4KーPTTHがインスリン族に属することをさらに確証した. 遺伝子構造は,(5′)シグナルペプチド/B鎖/Cペプチド/A鎖の順にコードするものであることが示された. この構造は既知のインスリン遺伝子の構造と全く一致する. 他のインスリン族ペプチドと異る点として,イントロンをもたないことが示された. このことは,インスリン族ペプチド分子の進化の理解に貴重な資料を与えるものである. 2. カイコ脳に由来するcDNAの構造解析ーカイコ脳mRNAから調製したcDNAライブラリーから,4KーPTTHのcDNAを単離し,構造解析を行った. ゲノムDNAから得た遺伝子とよく一致する結果を得,脳でこの遺伝子が発現されていることが確認された. 3. 22KーPTTHをコードするcDNA及びゲノムDNAの単離ープローブと結合するクローンは得られたが,ヌクレオチド配列の一致するDNAはまだ得られていない. 4. 4KーPTTH天然標品に対する抗体の作製ー抗体作製,その性貭の吟味を終り,今後の遺伝子産物の同定に使用するための準備を終った. 購入備品である低温バスサーキュレーター,小型培養回転器は,上記1〜3項の遺伝子クローニングに使用,能率向上に大きく寄与した.
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