ヒドラのパターン形成原理を明らかにするために、ヨーロッパ産ヒドラ(Hydra tenuata)を用いていろいろのタイプの実験が従来から行なわれてきた。そしてその結果は反応拡散モデルで統一的に良く理解できると一般的い考えられている。 しかし日本産チクビヒドラ(H.magnipapillata)の突然変異系統reg-16を用いて我々が行なった実験結果は、反応拡散モデルでは説明困難な点がある。量も重要な点はモデルでは頭部活性化能力の変化と抑制能力の変化は必ず連動するはずであるが、reg-16では必ずしも連動しない事である。 そこで本研究ではチクビヒドラ野生系統を用いて両能力の変動相関を詳細に検討した。その結果頭部除去後に再生端組織を再除去すると、再生端附近の組織の抑制能は最低限12時間は低下したままでいること、しかしこの間活性化能の上昇は認められない事がわかった。従って野生系統においても活性化能と抑制能の変化の間には必ずしも連動性は存在しないことが明らかとなった。これは反応拡散モデルではヒドラのパターン形成を説明できない事を示している。 今後反応拡散モデルにかわる新しいパターン形成モデルの導入が必要である。
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