研究概要 |
昭和61年度の研究結果は以下のようにまとめられる。 1.底生有孔虫類の微小空間分布の観察……南関東沿岸および南海トラフ域において海底表層部の微環境を観察・検討した。その結果、海底表層部には物理・化学・生物学的な条件の違いに基づく微小環境が多くあり、底生有孔虫類はそれぞれの微環境に適応して棲み分けていることが明らかになった。このうち、岩礁地の微環境と底生有孔虫との相関については論文としてまとめた。(北里・和田担当) 2.実験室飼育……静岡県下田湾より採集した有孔虫を実験室内で飼育し、双眼実体顕微鏡,倒立型培養顕微鏡を用いて生活様式・仮足運動・摂飼様式を観察した。その結果、有孔虫の仮足の伸ばし方には3つのパターンがありそのパターンと有孔虫の殻形態との間には相関があることがわかった。また仮足の伸ばし方、仮足の量と運動速度との間にも関係があり、これらの結果は論文にまとめ、投稿した。(北里担当) 3.SEMによる毅形態の観察……実験室飼育を通じ、仮足運動を観察した個体を走査型電子顕微鏡を用いて、仮足の出口である口孔部を中心に殻形態を検討した。その結果、有孔虫の口孔部付近にみられる構造・彫刻は仮足を伸ばす時のガイドの役割をしているとの結論を得た。(北里・担当) 1〜3の研究によって底生有孔虫類の口孔部の諸形態は仮足運動に関連した機能を持っている可能性が大きいと考えられる。 4.殻形態の理論的検討……パーソナルコンピュータを用い、底生有孔虫の殻の基本形態を初等幾何学的に検討した。本年度は有孔虫の各部室を球で近似し、球を重ねあわせて有孔虫の形態を表現する方法を開発した。しかし、この方法でな殻の基本形態が充分表現できないため、次年度は微分幾何学的方法に切り替えることにした。
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