研究概要 |
本研究は, 従来不明の点が多かった有殻頭足類に(とくにアンモナイト類)の進化古生物学的諸問題を総合的に分析し理解する目的で行われた. その結果, 機能形態・初期発生・タフォノミーなどについて, 以下のような知見を得た. 1.アンモナイト類に関する研究 (1)白亜紀アンモナイト類20種の集団標本について, 殻形を決めるパラメーターの種内・種間変異を比較・検討した. その結果, 流線効果の高い殻をもつ種ほど変異量が小さく, 逆に強い刺や疣をもつ類ほど変異が大きいことがわかった. このことから, 殻の外部形態は生活様式と密接に関係していたものと推定される. (2)白亜紀アンモナイト5超科8種の幼殻(アンモニテラ)表面に特徴的な多数の小突起を識別した. それらを現在頭足類や他の軟体動物の原殻(胚殻)の表面構造と比較して結果, 卵殻中でできた構造であることが推定された. (3)北海道の上部白亜系中に多産するアンモナイト化石の産状・保存を野外・室内で詳しく検討した結果, 含まれる岩相・層位などにより化石の保存状態や構成が大きく異なることが判明した. このことから, 初期化石化過程において, すでに生体群集の情報にゆがみが生じていることが推察された. 2.オウムガイ・アンモナイト類の比較研究 頭足類の食餌器官である顎片の構造・筋肉との対応関係などについて, 現生オウムガイとアンモナイトの間で比較検討し, 食性・比較解剖について知見を得た. またオウムガイについては殻形態の性的二型・種内変異を明らかにした.
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